部長挨拶


           新潟県高等学校体育連盟
            剣道専門部部長


       
     久 保 田  幸 正

   
  
「規範意識」

 少年犯罪や、いじめによる自殺等が、新聞紙上をにぎわせています。新潟県では、平成19年度に引き続き本年度も「いじめ根絶」の取り組みが実施されており、新教育課程審議会でも規範意識や自尊感情を育む道徳教育の充実が検討されています。
 さて、日本の道徳教育や規範意識はどこから生まれてきたものなのでしょうか。ここに、新渡戸稲造著の「武士道」があります。 
その序文で著者は、「私が子どものころに学んだ人の倫たる道徳の教えは、武士道だった。」といっています。そして、この著書の中で武士道とは、武士の心に刻み込まれた掟として教育された道徳的原理であり、勇猛果敢なフェア・プレーの精神、文武の徳の根本である。と述べています。武士道の源としては、仏教と神道であり、道徳的な教義に関しては、孔子の教えが最も豊かな源泉であり、中でも五倫(君臣、親子、夫婦、長幼、朋友)は日本人の民族的本能が以前から認めていた。とも述べています。
 著者は、武士道の基本的精神を勇猛果敢なフェア・プレーの精神とし「義」を支柱に置いていますが、「義」とは、人間としての正しい道である「正義」のことであり、「道徳(モラル)」である。モラルは、規則のように悪いことをしたからと罰せられるものではなく、自分で自分を律していかなければない。と語っています。
全日本剣道連盟の剣道の理念においても、「剣道は剣の理法の修練による人間形成の道である」とうたわれています。
 剣道は、どのスポーツよりも、どの武道よりも激しい性格を持っています。一歩誤ると粗暴になりがちですが、これを律するのは義の心であり、武士道精神ではないでしょうか。剣道は、激しい稽古をとおして礼儀・礼節を重んじ、智をもって技を工夫し、親、兄弟姉妹、人を大切にする、自分の身を守ってくれる防具にも感謝の念を持つなど剣道を志す人はこの武士道精神を実践し、思いやりの心、正義の心を養い人々の模範となるよう努力しようではありませんか。